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2013/12/1

Social Leader Vol.3 「患者の権利」と「子ども療養支援士」/弁護士 平原興先生

今月は、インタビュー第3弾で、なんとGR1号の高校時代のバンド仲間の登場です。
平原興先生は、弁護士としての多忙ななか、
医療分野や「患者の権利」について真剣に取り組まれており、
特に、最近は、「子ども療養支援士」創設を目指して、
積極的に支援活動をされています。

平原先生から、我々も1病院の視点だけにとらわれないで、
さまざま立場から社会の向上のためにどうあるべきか、
イメージを豊かにしていく必要性をあらためて感じました。

※内容は伺った時のお話に基づいて編集しましたが、
一部、紙面の都合上、改編・加工させていただいております。

平原興先生
<ご略歴>
・弁護士
・1973年生まれ
・一橋大学法学部卒業
<埼玉弁護士会活動>
・人権擁護委員会副委員長
・子どもの権利委員会副委員長
<日弁連活動>
・人権擁護委員会委員

<参考URL>
http://www.okura-law.com/profile_h.html
http://blog.livedoor.jp/bengoshiretsuden/archives/51386276.html
※今回、紙面の都合で取り上げられなかった生殖医療についての見解なども読めます。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
GR:
いやぁ、平原先生、こんな形でお話が聞けるとは!(笑)
全然違う人生を歩んでいるはずなのだけれど、
なぜだか医療というフィールドで再会するって、
すごく不思議な感じだよね。
少し、焦点からずれるかもしれないけど、
君がどういう人生を送る過程で、弁護士というお仕事を選んで、
そして今、その中で君が力を注いでる仕事とは我々にとってどういうものなのか、
いろいろ伺いたくて、時間をいただいた次第。

平原興先生(以下略称 平原):
確かに奇遇だよね。
同じバンドで、俺がドラムで、芦田(GR1号)がベースと、
高校時代からもうちょっと息があっていれば、
もっといい演奏できたかと思うけどね(笑)

※22年前の我がバンド ”Sin”
※若かりし頃の平原センセ
※若かりし頃のGR1号

GR:
当時、現役で大学の法学部に入った時は、
なるほどというか、君らしいなとは思ったけれど、
元々、司法系の志望だったの?

平原:
いや、医学部志望だった。
中でも、精神医療とかに興味あったかな。
でも、自分で思いつめるというか入り込む性格だったし、
周囲からもあまり合わないんじゃない?って声もあって、
法学部に入ったという感じ。

GR:
へーそうだったんだ。で、在学中に司法試験受かっちゃったわけでしょ?
最初から、検事や裁判官ではなく、弁護士志望だったの?

平原:
在学中と言っても留年してるから・・・。
まあ、それはおくとして、当初、自分にとって、
状況を客観的に見られる立場である裁判官がいいかなという気持ちもあったんだ。
でも自分は「死刑判決は書けない」なという思いと、
人と会うおもしろさというのを感じて、弁護士の道を選択した。
今となっては、裁判官として、
徹底的に「死刑を書かない」説明を社会にするという道も
ありだったかなとも思うけどね。

■■■ここから30分、死刑を巡るGRの質問に平原氏が答える状況。
全てをうまく書ききれないのですが、印象に残ったのは、
「死刑囚であれなんにせよ、国家が社会の構成員を抹殺するという形で、
除去することで解決というのは無責任ではないか。」という話と、
「国家というのは、時代で意思が変わる他人の集合体でしかないわけで、
そこに人を殺してもいい権限まで付与するというのは、
出発点として自分は怖い。」という話。
確かに、今の国家が大丈夫だから良いという話でもないような気はした。■■■

GR:
で、さっき聞いたけど、就職してから、ずっと同じ事務所でやってるんだよね?
専門は「医療」というカテゴリーになるのかな?

平原:
うん、事務所はずっと一緒だね。ただ、
通常の仕事は「医療」専門ってことはなくて、
日本弁護士連合会(日弁連)の医療部会に属して活動している中で、
いろんな医療に関する問題に取り組むようになったんだ。

今は、患者の権利の法制化が中心テーマと思っているけれど、
小児の療養支援士や、性同一性障害を含めた性的少数者の問題の
きちんとした勉強とかをもっと力を入れていきたいなと思っている。
ほかにも、細かくテーマをあげると、
生殖補助医療、死因究明制度、医療事故調査制度(医療安全調査委員会)、
終末期医療といったテーマについても検討チームなどに参加しているよ。

GR:
やっぱり忙しそうだねぇ。

平原:
これ、本持ってきたから、あげる。

といただいたのが、日本弁護士連合会人権擁護委員会編による
「提言 患者の権利法 大綱案」
http://www.akashi.co.jp/book/b128209.html

第1章 患者の権利に関する法律大綱案の提言
第2章 患者の権利をめぐる経緯
第3章 ハンセン病問題
資料編 プレシンポジウム報告
と3章構成のうちの第3章はハンセン病問題に占められていた。

平原:
ハンセン病問題に対しては、
弁護士も含めた司法もこれを放置していたものとして、
反省しなければならない問題だと考えているんだけれど、
その中で再発防止の柱の第一が「患者の権利の法制化」とされていたんだ。
ハンセン病の隔離政策のような事態を繰り返してはいけないという「反省」からも、
弱い立場に陥りやすい患者の権利をきちんと確立することが必要だと思うし、
その指摘が患者の権利を法制化しようという動きを
大きく進めている力になっていると思うんだ。
そんなあたりを考える上で、是非読んでもらえれば・・・。

GR:
「ハンセン病」の問題は、深刻な人権問題だと思ってきたけれど、
それを反省として、意義のある動きが生まれてもいるんだね。
で、その話の流れから、
が「子ども療養支援士」制度創設を応援している意味が少し見えてきた。

平原:
正しい説明や詳細は、子ども療養支援士協会のホームページとか、
http://kodomoryoyoshien.jp/
順天堂大学の田中恭子医師とか専門家の話を聞いてほしいけど、
http://www.aiikunet.jp/exposion/manuscript/26.html
アメリカではチャイルド・ライフ・スペシャリスト(Child Life Specialist以下CLS)、
イギリスではホスピタル・プレイ・スペシャリスト(Hospital Play Specialist以下HPS)
という役割が病院にあってね、しっかりとした資格制度にもなっている。

要は、入院という「療養」における子供の権利を代弁したり、
専用の人形とかの専用器材なんかも使いながら、
「なぜ自分が手術を受けなければいけないか。」を納得して、
遊びながら子供が治療などに主体的に取り組めるように
環境を整えるというものというのが僕なりの理解かな。

GR:
子ども療養支援士のサイトとかでよく見る「プレパレーション」ってさ、
「子どもの発達段階や個別性に配慮しながら、
自分の課題(治療その他)に主体的に取り組めるように環境を整える」とあるけど、
要するに、「注射を嫌がる子供を励まして、
痛いのによく我慢できた子に対して母親のように抱きしめたりする」
ことなのかとか、そんな理解で合ってる?

平原:
ちょっと違うかも(笑)
この注射のケースの形とか、手術を迎えた子供だったら、
おもちゃの診察道具・注射道具なんかを使いながら、
まず、注射や手術の意義を納得してもらったり、
子どもの内面にある自らの感情表出も促し
(何が怖い? 不安? 誤解を訂正する)ながら、
これから起こる治療や検査に対して、子ども自身が理解し、
安心して臨めるよう手助けをするという感じかな。

ある意味、子供の成長過程に合わせて、克服を促すのを、
専門の立場の人が関与するというかね。
そういう意味で、療養支援士という立場は、
「母親」の代替ではなく、子どもの側に立った
プロフェッショナルという見地から子供をサポートしたり、
療養環境改善に努力し、
患者家族と一緒に力を合わせていくイメージなのかもしれないね。

GR:
我々、外の人間から見ると、ソーシャルワーカーの方とか、
子ども病院とかに配属されている保育士さんとかとの役割の違いや、
看護師さんが看護の視点で病棟を見ている中での必要性って、
なかなか見えにくいところがあるよね。

平原:
うん、正直、自分もどこまできちんと理解できているか
わからないところもあるけれど、
例えば、看護師さんや医師は、基本、医療やケアを行う立場から、
患者さんに対する役割になると思うけれど、
子ども療養支援士は、受け手の子どもの側に立って、
内面の不安や感情を捉えてフォローしていったり、
その入院中の療養環境を整えていったり、
傍らにいて子どもそのものを支援するというイメージかな。

ソーシャルワーカーや臨床心理士とも
重なる部分もあるのかなとも感じるけれど、
こども療養支援士は、やっぱり子どもに関する専門、
「病気や障がいを持つ子どもの成長発達を支援し、
入院や治療にまつわるトラウマを軽減・緩和する
精神的なサポートを行う」ことに特化して、
スキルを学問的にも身に着けた人ということになるかな。

GR:
今、こども療養支援士の日本での普及度合いって、どうなの?

平原:
CLSやHPSの人たちを含めても、
やっぱりまだまだもっと存在から
知ってもらわないといけない段階なんだろうと思う。
でもさ、「病院なんだから、子供もおもちゃを
もってきちゃいけない」とか言われると、
一見しょうがないことだというイメージも持っていたんだけれど、
それって、なぜなのだろうと。

おもちゃの共有が感染元になるという話なら分かるけどさ。
まあ、おもちゃはそこまでいわれにないにしても、
たとえば、入院中、遊べる場がないとか、
家族と一緒にいられませんとか、
「病院だからできなくって当たり前で、そこで終わり。」としないで、
「それが、病院の都合なら、工夫しよう」とか、
「病院と子供の希望の間に立って調整を提案しよう」みたいなことを
考える役割があるのはいいなあというのを素朴に思うんだよね。

僕らが「患者の権利」を大上段に振りかざすと、
病院の方々は身構えるだろうけど、
「患者の権利」って、そもそもは療養支援士の視点などから
考えていくのもありだと思うんだ。
病気だから、患者だからって、なんでそれが制約されるのっていう部分を
どうやって解消していくかというのが大事なことだと思うし、
それを子どもの側にいる療養支援士のような、
暖かいイメージで捉えてもらえれば、
決して対立的なものを目指すものじゃないのが
わかってもらえるんじゃないかな。

GR:
今日はありがとう。子を持つ親の立場からしても、
客観的な立場から考えても、多感で成長段階にある子どもに、
「長期入院」や「手術」という非日常なイベントや、
「人と自分が違う」という障害や後遺症に対して、
うまく子どもたちが自分の中で「消化」できるよう
手助けできるプロがいるという「保険」は、
社会として、素晴らしいことだと思う。

それに、子どもって、すごくいろいろ感じているんだけど、
それを外で折り合いをつける「表現」する術が、
どうしても大人並みにはいかないからね。
そこの代弁者という定義がはっきりしている立場が確立するのは、
確かに「人権」として一つ大事なことなのかもしれないと思ったよ。

平原:
ひとつひとつ形にしていくのは大変だし、
主に、患者を代理する弁護士という立場上、
医療関係者との関係で、時に対峙するような考え方に
なってしまうこともあるけれど、
社会というか医療を良くしていきたいという意思については、
同じだとも思っているよ。

■■■そんなまとめもしきれない中、
お店から「お客さん、お席の時間が大幅に超過してますよ!
と追い出されてしまいました・・・(笑)■■

※慌てて、当日、写真も撮らず、後日、拝借・・・

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